本物の技術を駆使した紳士服は、着用した人の後ろ姿を見るとわかります。既製品にはないきめ細かい作業で作られているからです。私たちはそんなものづくりにこだわります。

その一つが「毛芯（けじん）縫製」。表地と裏地の間に抱かせる毛芯を縫い付ける時、いかになじませるかがポイントです。毛芯と一緒に生地を加湿して癖を取り、ベストな状態を見極めて芯据えをしていきます。シルエットや着ごこちを重視する手仕事、見えない部分の手縫いを大切にし、体にフィットした服を仕立てるところに、服づくりの醍醐味があります。私はこのクラシックな技術の考え方を社員たちに伝え、教えてきました。こだわりを求めるお客様がいる限り、今後も私たちの技術をさらに高め、続けていきます。

パリコレクションに出展している有名ブランドの服もつくっています。つくる服は１点ものなので、デザイン、素材、納期などで悩みに悩みます。難しい仕事がきても私たちは「できない」とは言いません。社員一丸となって全力でやり切り、ジャッジはお客様に任せます。こうして信頼を築き上げてきました。パリの晴れ舞台で私たちがつくった服をモデルが着て歩き、それから量産に入る、という何事にも代えられないやりがいがあります。

経営者の立場で工場を管理する一方、いつまでも技術者でありたい。自分の持っている技術をどんどん教え、本当のメイド イン ジャパンの服づくりを一緒に担う若い人たちを育てたいと思っています。東北の人は指先が器用で真面目。岩手・二戸の工場はレベルの高い技術者集団です。真剣に服づくりに向き合う会社でありながらアットホームな雰囲気もあります。社員の幸せを叶える「あったかい工場」は、小さな町から世界に向かって発信しています。